【国枝栄調教師】「ダービーは特別なもの」──最後のクラシックへ向けアマキヒ、ガルダイアと青葉賞に挑む

2025年04月20日(日) 18:00

今週のFace

▲最後のクラシック参戦目指す国枝師に特別インタビュー(撮影:下野雄規)

26年2月で定年を迎える国枝栄調教師。ここまでJRA重賞70勝を挙げる名伯楽が最後のクラシックシーズンへ向け、青葉賞に有力馬2頭で挑みます。

三冠牝馬アパパネを母に持つ厩舎ゆかりの血統で、オーナーとの信頼も厚いアマキヒ。GI馬アエロリットの半弟で、精神面での成長が見られるガルダイア。この2頭にかける思いや、それぞれの道のり、現在の様子などを伺いました。そして、今年がラストチャンスとなる“ダービーへの思い”も打ち明けてくれました──。

(取材・文=小野響介)

親仔3代を手がける思い入れのある血統馬アマキヒ

──厩舎ゆかりの血統です。

国枝 祖母ソルティビッド、母アパパネを管理させてもらったし、思い入れのある血統です。これまでアパパネの子どもはモクレレ、アカイトリノムスメ、バードウォッチャーをやらせてもらって、馬の格好はこの馬が一番いいですね。牡馬で少し気難しいところはあるけど、2勝して日本ダービーのトライアルに使えるところまで来てくれた。まだメンタル面を含めて良くなると思うけど、現状の中では十分に力を出してくれていると思っています。

──前走の1勝クラスを振り返ってください。

国枝 思っていたよりも後ろの位置取りになったけど、向正面で一気にまくって先頭に並びかけて、そのまま押し切ってくれた。能力の高さを示してくれました。

今週のFace

▲1勝クラスで能力の高さを証明したアマキヒ(撮影:小金井邦祥)

──所有する金子オーナーとは数々の重賞を制し、GIは9勝しています。金子オーナーとはどんな関係性ですか?

国枝 最初に預かったのがブラックホークでスプリンターズS(99年)と安田記念(01年)を勝つなどの活躍をしてくれたことで縁ができました。その後にピンクカメオ、アパパネ、アカイトリノムスメといったGIを勝つ馬がうちの厩舎に来てくれました。ブラックホークは私が初めて重賞を勝った馬で、そのあとはGIを2つ勝ってくれました。

──どんな方ですか?

国枝 すごい人ですよ。これだけ長い期間、馬主として活躍されていて、金子オーナーの馬は競走成績だけではなく、キングカメハメハ、ディープインパクトは種牡馬としても成功しています。世界を見ても、これほどの人はいないと思います。

──金子オーナーとの思い出の馬は?

国枝 アパパネですね。牝馬三冠を勝たせてもらいましたから。

今週のFace

▲金子オーナーとの思い出の一頭アパパネ(撮影:下野雄規)

──4月13日の福島7Rを金子オーナーの所有馬バードウォッチャーで制し、JRA通算1100勝を挙げました。

国枝 1100勝という数字は特に意識はしていなかったけど、金子オーナーの馬で区切りの勝利を挙げられたことはうれしく思いました。

──アマキヒは母アパパネ、姉アカイトリノムスメと比較してどうですか?

国枝 牝馬と牡馬の違いがあります。牝馬のアカイトリノムスメは元気だったけど、扱いやすかった。ただ、同じアパパネの子どもでも牡馬は我の強いところがある。アマキヒもいい意味でヤンチャ。活力があるよね。ただ、走る馬は、特に牡馬はそういうところがないと。能力は感じています。

──1週前追い切りは6F83秒3-65秒4-50秒6-36秒6-11秒8で併せたサトノエピックに遅れました。

国枝 併せ馬で遅れたけど、パートナーは動く馬でした。時計的には十分だったし、順調です。

──レースに向けてはどうですか?

国枝 実戦を使いながら力をつけているし、楽しみにしていますよ。

競馬への慣れが見られるガルダイア

──前走の毎日杯は2着でした?

国枝 コントロールの難しいところがある馬。新馬戦は勝ったけど、返し馬とゴールしてから馬が止まらなくてね。デビュー当初はそういった若さが目立っていたけど、レースを使いながらそのようなところは改善しつつある。毎日杯はいいレースができたと思っていますよ。

──成長を感じますか?

国枝 競馬に慣れてきた感じですね。毎日杯も結果的に前へ行ったけど、これまでとは違ってムキになって走っていなかった。前へいく形という意味ではこれまでと同じだけど、競馬の中身としては違います。いいレースだったと思います。

今週のFace

▲ガルダイア(撮影:下野雄規)

──今回は2400mに距離が延びます。どんな競馬になりそうですか?

国枝 重賞で甘くはないでしょうけど、距離はこなせると思っている。流れ次第ですね。ペースが落ちつけば、前に行ってリラックスして走れるだろうし、仮にペースが速くなって後ろのポジションになっても、自分のペースを守って行ければ問題ないと思います。とにかく肩の力を抜いて、自分のリズムで走ってほしい。位置取りよりもリズムが大事。うまく息を入れながら走ってくれれば、いいところを見せてくれると思っています。

──普段の様子はどうですか?

国枝 厩舎では基本的にどっしりと構えている。アマキヒよりも大人びていて扱いやすいですよ。

「ダービーは特別なもの」

──青葉賞は今年から日本ダービーまでのレース間隔が1週間延びます。どうお考えですか?

国枝 これに関してはうちの馬に限ったことではないけど、それはいいです。次に向けての調整期間に余裕ができますからね。

──来年に定年を迎える国枝先生にとって、今年が最後の日本ダービーになります。どんな思いですか?

国枝 私がこの業界に入ったときと比べて状況が違います。色々なカテゴリーですばらしいレースがありますし、凱旋門賞やブリーダーズCといった海外のレースも身近の存在になりました。日本ダービーだけに固執するような時代ではないですが、それでも競馬の世界においてダービーは特別です。日本に限らず、世界でもそうですけど、「ダービーオーナー」、「ダービートレーナー」、「ダービージョッキー」というのは一目置かれるようなところがあります。それは勝ちたいですよ。ただ、今の私は参加させてもらえるのか分からない状況ですからね。仮に参加させてもらえたら、いい競馬をしてほしいです。それで運があればという感じですね。

(文中敬称略)

netkeibaアプリで続きを読む

このまま続きを読む

バックナンバーを見る

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

netkeiba特派員

ジョッキーや調教師など、毎週“旬”な競馬関係者にインタビュー。netkeiba特派員がジョッキーや調教師、厩舎スタッフなど、いま最も旬な競馬関係者を直撃。ホースマンの勝負師としての信念から、人気ジョッキーのプライベートまで、ここだけで見せてくれる素顔をお届けします!

関連情報

新着コラム

コラムを探す