クラシック初制覇のリオンディーズ産駒 相性が良い配合パターンとは

2025年04月21日(月) 18:00

血統で振り返る皐月賞

【Pick Up】ミュージアムマイル:1着

 父リオンディーズは昨年の天皇賞(春)を勝ったテーオーロイヤルに次いで2頭目のGI勝ち馬を出しました。クラシックレースは初制覇です。

 リオンディーズは、ロードカナロア、ドゥラメンテ、ルーラーシップ、レイデオロなどと同じくキングカメハメハの息子で、現役時代、朝日杯FSを勝ってJRA賞最優秀2歳牡馬に選出されました。ただ、折り合いに難しさがあり、屈腱炎により日本ダービーを最後に引退したため、能力に釣り合うほどの競走実績は挙げられなかった印象があります。エピファネイアの半弟、サートゥルナーリアの4分の3兄という良血ながらタイトルの少なさが影響したのか、引退後は社台スタリオンステーションではなく、日高町のブリーダーズ・スタリオン・ステーションで種牡馬入りしました(当時サートゥルナーリアはデビュー前)。

 初年度の種付け料は100万円。テーオーロイヤルをはじめ、リプレーザ、アナザーリリック、インダストリア、ジャスティンロック、サンライズホークといった活躍馬をコンスタントに出して評価を上げていき、2025年には400万円まで上昇しています。来年はミュージアムマイル効果でさらに上がることでしょう。

 母ミュージアムヒルは芝1200〜1600mを得意とし、最終的には3勝クラスに在籍しました。ミュージアムマイルは初仔です。ハッピートレイルズにさかのぼるファミリーは繁栄しており、昨年、オークスと秋華賞を勝ったチェルヴィニアが出ました。

 エピファネイア、リオンディーズ、サートゥルナーリアの三兄弟は、ハーツクライと相性良好です。母方にハーツクライを抱えた産駒が計20走以上している75頭の種牡馬を、1走あたりの獲得賞金額が多い順に並べると、1位エピファネイア(467万円)、2位サートゥルナーリア(466万円)、3位リオンディーズ(391万円)となり、シーザリオの息子たちが金銀銅を独占します。エピファネイアはエフフォーリアを、サートゥルナーリアはファンダムを、リオンディーズはミュージアムマイルを出しています。この配合パターンは注目です。

血統で振り返るアンタレスS

【Pick Up】ミッキーファイト:1着

 土日に行われた3つの平地重賞の勝ち馬は、すべてスペシャルウィークの血を抱えています。「ドレフォン×スペシャルウィーク」は、10頭出走してミッキーファイト、サーマルウインドなど6頭が勝ち上がり、成功を収めています。

 母スペシャルグルーヴはその名から推察されるとおり女傑エアグルーヴの直牝系に属しています。繫殖牝馬としてきわめて優秀で、本馬の他にジュンライトボルト(チャンピオンズC、シリウスS)、グルーヴィット(中京記念)を産んでいます。エアグルーヴ牝系とドレフォンの組み合わせといえばデシエルト(中日新聞杯)の名が挙がります。

 父ドレフォンは皐月賞馬ジオグリフを出していますが、ダートGIはまだ勝っていません。本馬はレパードS、名古屋大賞典に次いで重賞3勝目。兄弟やファミリーの質、配合構成、540kg台の雄大な馬格から、まだまだ伸びしろがあり、ジャパンダートクラシック2着、フェブラリーS3着という成績からも、ドレフォン産駒のダートGI制覇に最も近い馬でしょう。

知っておきたい! 血統表でよく見る名馬

【マルゼンスキー】

 1973年秋、橋本牧場代表の橋本善吉氏(橋本聖子参議院議員の父)が米ケンタッキー州キーンランドのセリで母シルを購買。同馬は英三冠馬ニジンスキーの仔を腹に宿しており、翌春誕生したのがマルゼンスキーでした。

 当時の規定でクラシックに出ることは叶わず、朝日杯3歳S(現朝日杯FS)を大差でレコード勝ちするなど8戦全勝の成績を残して引退しました。いまなお史上最強馬に推すオールドファンもいます。

 サクラチヨノオー(日本ダービー、朝日杯3歳S)、ホリスキー(菊花賞)、レオダーバン(菊花賞)、スズカコバン(宝塚記念)など多くの活躍馬を出して成功し、総合種牡馬ランキングのパーソナルベストは1988年の第2位。母の父としてもスペシャルウィーク、ライスシャワー、ウイニングチケット、メジロブライトなどを出しました。

 競走馬時代のマルゼンスキーは、前肢の外向に起因する脚部不安に苦しみ、産駒にも脚もとの弱さを伝えました。それが唯一のウィークポイントです。ただ、血の質としては素晴らしく、同時代の欧米の名血と比較しても劣るところはありません。スピードもスタミナもあり、芝もダートもこなし、大レース向きの底力にも恵まれています。

 マルゼンスキーを母の父に持つスペシャルウィークは、シーザリオ、ライツェント、スペシャルグルーヴといった名繁殖牝馬の父となり、シーザリオはエピファネイア、リオンディーズ、サートゥルナーリアの母となりました。スペシャルウィークがブルードメアサイアーとして非凡な成績を収めたのは、マルゼンスキーの血の威力が少なからず影響したと思われます。マルゼンスキーの血を内包したGI勝ち馬は、今年に入ってからもサトノレーヴ、ミュージアムマイルが仲間入りしています。

血統に関する疑問にズバリ回答!

「アメリカには日本のサンデーサイレンス系のような強力な父系はありますか? 」

 現在、イントゥミスチーフが6年連続チャンピオンサイアーとなっています。今年も首位の座をキープしており、このまま順調に行けば、20世紀以降の北米最長政権だったボールドルーラーの7年連続(1963〜69)に並びます。昨年のランキングの7、8位には息子のゴールデンセンツ、プラクティカルジョークが入っています。前者は昨年のケンタッキーダービー馬ミスティックダンの父です。

 昨年の10位以内の種牡馬を系統別に分類すると、ストームキャット系が4頭、ミスタープロスペクター系が4頭、エーピーインディ系が1頭、アンクルモー系が1頭と多彩。

 イントゥミスチーフ系の勢いが加速すれば、サンデー系のような存在になる可能性はありますが、2位ガンランナーは強力なライバルで、その他にも有能な他系統の若手種牡馬は少なくありません。また、フライトラインのような大物も産駒デビューを控えています。

 イントゥミスチーフがやがて王座を譲ったあと、子の代、孫の代まで繁栄できるかどうかは未知数で、サンデー系のように長期にわたって支配的な父系を築くのはハードルが高いのではないか、という気がします。

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栗山求

netkeibaでもおなじみの血統評論家・栗山求氏が血統の面白さを初心者にもわかりやすくレクチャー。前週の振り返りや、週末行われるレースの血統的推し馬、豆知識などを通して解説していきます。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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