ドゥラメンテのラストクロップ 3戦全勝エネルジコが日本ダービー制覇に挑む

2025年04月28日(月) 18:00

血統で振り返る青葉賞

【Pick Up】エネルジコ:1着

 父ドゥラメンテは現3歳がラストクロップ。わずか5年という短い供用期間でしたが、タイトルホルダー、リバティアイランド、スターズオンアース、ドゥレッツァ、シャンパンカラー、ルガル、ドゥラエレーデなど多くの活躍馬を出しました。

 現3歳のマスカレードボールは、苦手といわれた右回りの皐月賞で3着に食い込み、日本ダービーの有力候補に浮上しました。エネルジコ、ファイアンクランツの日本ダービー出走が確定し、アスクシュタイン、エムズ、キングスコール、ネブラディスクは京都新聞杯で出走権獲得に挑みます。ドゥラメンテ産駒のダービー制覇は今年がラストチャンス。質・量ともにかなりの陣容となりそうです。

 エネルジコはこれで3戦全勝。ヴィンターファヴォリテン賞(独G3・芝1600m)を勝ったエラスムスの半弟ですが、母エノラは独オークス(G2・芝2200m)の勝ち馬で、エネルジコの姪にも独オークスの勝ち馬がいます。母の兄弟にはドイツの重賞勝ち馬が2頭おり、それぞれ芝2400mと芝3200mを勝っています。大レース向きのスタミナと底力を感じます。

 母方にドイツ血統を抱えたドゥラメンテ産駒といえば、桜花賞とオークスの牝馬二冠を制覇したスターズオンアースがいます。3歳春はもちろんですが、古馬になってさらに強くなる血統です。

 ドゥラメンテ産駒は東京芝2400mで連対率30.0%。2015年以降、当コースで産駒が20走以上した35頭の種牡馬のなかで第1位。青葉賞は昨年のシュガークンに次ぐ連覇となりました。今年から青葉賞と日本ダービーのレース間隔は中3週から中4週に広がります。これは追い風でしょう。

血統で振り返るフローラS

【Pick Up】カムニャック:1着

 ブラックタイドは24歳の今年も日高町のブリーダーズ・スタリオン・ステーションに繋養され、プライベートという形で供用されています。一昨年、昨年の種付け頭数はそれぞれ7頭。高齢ですから致し方ありません。

 現役時代、スプリングSを勝ったのが唯一の重賞タイトルでしたが、稀代の名馬ディープインパクトの全兄という血統が評価され、種牡馬入りを果たしました。この馬の直系子孫がやがてサンデーサイレンス系の主力を形成することになると想像した人はいなかったでしょう。息子のキタサンブラックが2年連続で年度代表馬に選出され、その息子イクイノックスはロンジンワールドベストレースホースのタイトルを獲得しました。この2頭の2025年の種付け料は2000万円。キズナ(父ディープインパクト)と並んでトップタイです。

 長い種牡馬生活を通じてブラックタイドが送り出したJRA重賞勝ち馬はわずか7頭。息子のキタサンブラックから大きな飛躍を遂げたという評価が妥当でしょう。その一頭であるカムニャックは、キタサンブラックと同じ「ブラックタイド×サクラバクシンオー」という組み合わせであることが評価できます。半兄キープカルム(父ロードカナロア)はダービー卿CT3着馬。母ダンスアミーガは中京記念や関屋記念で4着という成績があり、牝系をさかのぼるとダンスパートナー、ダンスインザダーク、ダンスインザムードを産んだダンシングキイにさかのぼります。

 距離延長はプラスだと思われるので、折り合いさえつけば芝2400mのオークスは悪くない舞台です。

知っておきたい! 血統表でよく見る名馬

【ルアーヴル】

 現役時代に仏ダービー(G1・芝2100m)を制覇しました。

 父ノヴェールは名馬アラジの半弟で、ラーイを経てブラッシンググルームにさかのぼる父系に属しています。母マリーラインベルクはポーラファルコン(ピヴォタルの父)の半妹。母の父ズラコはドイツの大種牡馬ズルムーの甥です。質の高い非主流血統を豊富に含んでいます。

 フランスで種牡馬入りし、初年度(2010年)種付け料はわずか5000ユーロでした。そのなかからアヴニールセルタン(仏1000ギニー、仏オークス)やオーヴレイ(ショードネイ賞、リュテス賞)を出して注目を集め、3年目に8戦全勝のラクレソニエール(仏1000ギニー、仏オークス)を出して評価を確かなものとしました。他にワンダフルトゥナイト(英チャンピオンズフィリーズ&メアズS)、ヴィラマリナ(オペラ賞)などを出しています。2017、18年には種付け料が6万ユーロまで上昇しました。初年度の12倍です。

 日本では社台ファーム生産のプールヴィルがフィリーズレビューを勝ち、前出のアヴニールセルタンとラクレソニエールもまた社台ファームで繁殖牝馬となっています。距離は万能で、スピードや切れ味もあるので日本の高速馬場に対する適性があります。

 母の父としてはマイルCSを勝ったセリフォス、阪神牝馬Sを勝ったデゼル(母はアヴニールセルタン)を出しており、母方に入る血としてはきわめて優秀です。

血統に関する疑問にズバリ回答!

「香港のクイーンエリザベス2世Cを勝ったタスティエーラはトライマイベスト系に属していますが、この父系は他にどのような馬が活躍していますか?」

 トライマイベストはちょうど50年前の1975年4月28日に誕生しました。大種牡馬ノーザンダンサーの息子です。タスティエーラが属するラストタイクーンの分枝は、ニュージーランドのチャンピオンサイアーであるオライリー、オーストラリアのチャンピオンサイアーであるリトゥンタイクーンなどが出ています。前者の孫に、クイーンエリザベス2世Cと同日に行われたチェアマンズSPの覇者カーインライジングがおり、後者の父系もしっかり続いています。ちなみに、ラストタイクーンはキングカメハメハの母の父です。

 世界的にみてこの父系は、ラストタイクーンとは別のワージブの分枝に勢いがあります。このラインはダークエンジェルとメーマスという優れたスピード型種牡馬が大成功しており、これらの父アクラメーションは香港の名馬ロマンチックウォリアーの父としても知られています。

 ロマンチックウォリアーは昨年までクイーンエリザベス2世Cを3連覇。今年はタスティエーラが勝ったので、トライマイベスト系がこのレースを4年連続で制覇したことになります。

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栗山求

netkeibaでもおなじみの血統評論家・栗山求氏が血統の面白さを初心者にもわかりやすくレクチャー。前週の振り返りや、週末行われるレースの血統的推し馬、豆知識などを通して解説していきます。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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