話題は「鐙の長さ」から今年の勝利数へ──「“丹内さん”のほうが上にいるんやから、あなたが偉そうに言わないでください」と注意された!?【後編】

2025年04月18日(金) 18:02

“VOICE”

▲話題の「鐙の長さ」を深堀り!(撮影:福井麻衣子)

後編の今回は、ジョッキー同士でも感覚が大きく違うという鐙の細かい調整について。レースと返し馬と、キャリアを通じて、馬の体に合わせて…など様々な場面で長さを調整しますが、騎手によってその感じ方は十人十色。各々の試行錯誤の結果が詰まった奥深い“鐙の世界”を、前編に引き続き川田騎手が徹底解説します。

後半は、同期・丹内騎手の躍進について。今の活躍は「弛まぬ努力があってこそ」と川田騎手はいいます。そんな、心の底から応援する同期への“思い”を打ち明けてくれました──。

前編はこちら▼

話題の動画『20期生同窓会』でも喧々諤々──ジョッキーによって「鐙の長さ」はなぜ違う?

(取材・構成=不破由妃子)

川田騎手がレースと返し馬で鐙の長さを変えない理由

──鐙の長短は、身体能力や柔軟性も関係してくるのでしょうが、そのジョッキーが何を求めているか、どういう騎乗がしたいかという表現のひとつでもありますよね。10人のジョッキーにこのテーマを振ったら、10人それぞれまったく違う答えが返ってきそうな、そんな奥深さを感じます。

川田 絶対の正解がないなかで、各々が「今の最善」を求めた結果、その鐙の長さになっている。だから、メリットやデメリットについても、一概には言えないんです。

──20期生の動画のなかでも、「返し馬とレースでほとんど長さを変えない」という川田さんの話を聞いて、津村さんと丹内さんが声を上げて驚いていたから、ジョッキー同士でもそんなに感覚が違うんだなって。

川田「新馬でも変えない」と言ったら驚いてましたね。でも、佑介もほとんど変えないと言っていたから、僕が特別珍しいわけではないですよ。確かに返し馬とレースで鐙の長さを変えるジョッキーのほうが多いだろうけど、それほど変えないというジョッキーも一定数いると思います。

 津村の場合、レースのときはすごく短い鐙で乗るので、返し馬では落馬しないように伸ばしているというのが一番の理由で、丹内の場合は癖馬に乗ることが多いから、返し馬でのあらゆる動きに対応するために、より伸ばしておかないと…という話でしたよね。

──川田さんが、レースと返し馬で鐙の長さを変えないのはなぜ?

川田 一般的に、鐙を少し伸ばすと安全性が高まると認識されていますが、僕の場合はプラスにはならず、逆にハマりが悪くなってしまい、バランスを崩すことに繋がってしまう。伸ばしても詰めても、その点は弱くなりますね。だから、返し馬もレースも自分の標準の長さでいったほうが、左右のブレも含めてすべてに対応できるんです。

“VOICE”

▲川田騎手は「返し馬とレースで長さを変えない」(撮影:下野雄規)

──なるほど。本当に人それぞれなんですね。

川田 もちろん、馬のサイズ感に合わせて詰めたり伸ばしたりはしますよ。背中からお腹にかけてのサイズが細い子もいれば、太かったり幅のある子もいますから、そこは僕自身のハマりに応じて鐙の長さを調整します。

──そうか。1頭1頭サイズが違うから、そこでの調整も必要になってくるわけだ。すごく繊細な作業ですよね。馬の気性や馬体のサイズを考慮して、1頭1頭ピントを合わせなくちゃいけないんだから。

川田 そうですね。でも、それは微調整の範囲です。それ以前に、ジョッキーそれぞれに“標準”が違うのは、自分が目指す騎乗と、自分の体にしっくりくる長さを求めた結果。試行錯誤の結果です。デビューして以降、ずっと同じ鐙の長さで乗っているジョッキーなんて、ほとんどいないと思いますよ。

──ちなみに、年齢を重ねるにつれ、鐙が長くなる人が多いと聞いたことがあるのですが、それは本当?・・・

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川田将雅

1985年10月15日、佐賀県生まれ。曾祖父、祖父、父、伯父が調教師という競馬一家。2004年にデビュー。同期は藤岡佑介、津村明秀、吉田隼人ら。2008年にキャプテントゥーレで皐月賞を勝利し、GI及びクラシック競走初制覇を飾る。2016年にマカヒキで日本ダービーを勝利し、ダービージョッキーとなると共に史上8人目のクラシック競走完全制覇を達成。

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