空洞化するトライアル、時期変更で効果は?──なお残る問題と米国に倣う改善策

2025年04月28日(月) 18:01

教えてノモケン

▲前哨戦の開催時期変更を徹底解説(撮影:下野雄規)

 中央競馬の本場開催は、東京と京都に舞台が移り、5月4日からは7週連続でGIが行われる。従来は6週連続だったが、宝塚記念(阪神)が今年から2週前倒しされている。2025年の競走番組は、昨年は新潟で2週だけ行われていた暑熱対策のための「競走時間帯の拡大」が、中京を加えて「2場×4週」とされた点と並び、GIと前哨戦の間隔の調整が目玉の1つだった。

 近年、空洞化が目立つトライアルの施行時期を早め、メンバーの質を高めるのが狙いだった。桜花賞、皐月賞を含め平地GI・5競走を消化した時点で、前哨戦の顔ぶれ、本番での活躍度について、一定の答えが出た。施策の効果はあったのか?

桜花賞の傾向は変わらず

 近年の「前哨戦パッシング」の傾向が最も顕著に見られていたのは桜花賞だった。13〜24年の12回を見ると、前半と後半の各6回で全く様相が一変していた。前半(13〜18年)は、馬券に絡んだ18頭中、14頭が前哨戦のチューリップ賞に出走した組で、勝ち馬も4頭出ていた。ところが、19年以降の6回は勝ち馬ゼロで馬券圏内入りもわずか6頭。質の低下は明らかだった。

 替わって台頭したのが3歳初出走組で、19年は前年の朝日杯FS3着から直行してきたグランアレグリアが圧勝。21〜24年は阪神JFからの直行組が3連勝をあげた。残る2頭はエルフィンS(デアリングタクト=20年)とスターズオンアース(クイーンC=22年)で、2月の前哨戦からタイトルをつかんだ。優先出走権つきのトライアルは今では、収得賞金の少ない馬が一発逆転で出走権を狙う場になってしまった。

 そこでJRAはチューリップ賞を春の阪神開催の2週目から開幕週に、フィリーズレビューも3週目から2週目にそれぞれ繰り上げた。だが、結果から言えば施策は不発に終わった。

教えてノモケン

▲桜花賞を制したのはクイーンCから参戦のエンブロイダリー(c)netkeiba

 優勝したエンブロイダリーはクイーンC圧勝からの参戦。2着アルマヴェローチェは阪神JF優勝から直行。3着リンクスティップはきさらぎ賞(GIII)2着で賞金を加算して出走権を確保した。同レースはクイーンCより1週早い。4着マピュースはクイーンC2着。1番人気で逃げて5着と失速したエリカエクスプレスも1月のフェアリーS(GIII)を圧勝した馬。結局、3月出走組は馬券圏内どころか、掲示板にも入れなかった。

「前哨戦パッシング」を先導したのは、言うまでもなくノーザンファーム(NF)関係馬である。転機を告げたのは・・・

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野元賢一

1964年1月19日、東京都出身。87年4月、毎日新聞に入社。長野支局を経て、91年から東京本社運動部に移り、競馬のほか一般スポーツ、プロ野球、サッカーなどを担当。96年から日本経済新聞東京本社運動部に移り、関東の競馬担当記者として現在に至る。ラジオNIKKEIの中央競馬実況中継(土曜日)解説。著書に「競馬よ」(日本経済新聞出版)。

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